『アウシュヴィッツの争点』(53)

ユダヤ民族3000年の悲劇の歴史を真に解決させるために

電網木村書店 Web無料公開 2000.9.9

第3部 隠れていた核心的争点

第6章:減少する一方の「ガス室」 5

科学的で法医学的な世界初の「ガス室」検証が『ロイヒター報告』

 さてここで、いよいよすでに何度かふれた『ロイヒター報告』についてのくわしい評価にはいろう。

「チクロンB」および「ガス室」については、カナダでの裁判で、アメリカの専門業者による鑑定がおこなわれている。アメリカにはガス室での死刑を実行している州があり、実際にガス室の建造作業をした経験のある業者がいるのだ。その専門業者のロイヒターは、アウシュヴィッツの現地でのサンプル採集などの調査をおこない、詳細な鑑定書を作成し、法廷に提出している。

 報告の内容を要約すると、「ガス室」とされてきた建物の構造は、木製のドア、換気装置の不備などから青酸ガスの使用には不適当、「チクロンB」による大量殺人は不可能だとして、「ホロコースト」物語の「ガス室」の存在には完全に否定的である。

「チクロンB」から発生する青酸ガスは、コンクリートの天井、壁、床などに浸透して残留し、コンクリートの成分や鉄筋と結合してシアン化合物を形成する。日陰の場所なら最低数百年、条件次第では数千年後でも検出できるというのが、これまた別のアメリカの学者の法廷における鑑定証言である。

 ところが、「ガス室」と称されていた建物、または建物跡からは、まったくまたは「ごく微量」(サンプル一キログラムに最高で七・九ミリグラム)のシアン化合物しか検出されなかった。その一方で、「消毒室」からは、明確に大量のシアン化合物(サンプル一キログラムに一〇五〇ミリグラム)の残留が検出された。二桁以上の差である。「チクロンB」が「消毒室」で、衣類やマットなどからチフスの病原体を媒介するシラミを除去するためにつかわれたことは、すでにしるしたように絶滅論者も認める事実である。また、「ごく微量」の残留が検出された建物についても、消毒がなされた事実にあらそいがない。

「消毒室」から大量のシアン化合物の残留が検出されたという調査結果は、同時に二つの事実の証明になる。第一は、「消毒室」で「チクロンB」が使用されたという事実であり、第二は、「チクロンB」が使用された建物では数十年後でもシアン化合物の残留が消滅しないという事実である。第二の事実は同時に、「ガス室」と称されていた建物の調査の「照査実験」(コントロール、照らし合わせ)の基準の役割をも果たしている。

 手元にある一般向けの大型パンフレット、『ロイヒター報告』には、「アウシュヴィッツについてのはじめての法医学的調査」という副題がそえられている。調査作業が実施されたのは一九八八年だから、一九四五年のドイツ降伏から数えて四三年目のことになる。『ロイヒター報告』の原文は、刑事事件の裁判の証拠として、ロイヒター自身の口頭証言とともに法廷に提出されたものである。

 事件の被告、ツンデルは、カナダでパンフレット『六〇〇万人は本当に死んだか』を頒布したことを理由に逮捕され、告訴された。一審判決では一五カ月、二審では九カ月の禁固刑判決がだされ、上訴していた。

 法律的には、ツンデルの行為が刑法で禁じられている「虚偽の報道」に当たるというものであったが、「歴史見直し研究所」の『ニューズレター』(92・10)によると、一九九二年八月二七日に最高裁で勝利し、無罪が確定している。

 最高裁の判決全員一致ではなくて、四対三のきわどい過半数である。内容は「ホロコースト」についての判断を避けているというから、ロイヒターの鑑定についても同様のあつかいなのだろう。しかし、ツンデルが告訴され、地裁で有罪の宣告を受ける根拠になった刑法の条文が「結果的に少数意見を圧迫」しており、カナダの権利憲章に規定された言論の自由を侵害しているので「違法」だとする判決なのだから、ある意味では決定的な勝利なのではないだろうか。

 アウシュヴィッツIの「ガス室」の調査結果については『マルコ』廃刊事件以後、「イスラエル大使館の滝川義人報道官」が、「実験的に青酸ガスを使っただけ」という「聞き慣れない説」(『噂の真相』95.4)を発表している。

 ロイヒターの鑑定には、もう一つの決定的なポイントがある。青酸ガスは、火気にふれると酸素と化合して爆発する性質の気体である。だから、火の気のあるところのそばに「ガス室」を設置するのは危険だという主張である。

『デゲシュ説明書』には「可燃性」の項目があり、つぎのようにしるされている。

「液体シアン化水素はアルコールと同様に燃える。ガス状シアン化水素は一定の条件の下で爆発性の混合気体となる。爆発の最低限は、しかし、実際の消毒作業にもちいられる濃度よりも、はるかにたかい」

『世界百科事典』(平凡社)では「爆発限界は六から四一容量%」としている。たしかに「即死」の大気濃度「二七〇PPM」よりは「はるかにたかい」。ただし、「発火点」が五三七度Cとなっている。葬祭場に聞くと、現在の焼き場の温度は一二〇〇から一四〇〇度Cで、戦争中は薪をつかっていたが八〇〇から一二〇〇度Cはあったはずだという。爆発はしなくても、空気中で燃えて引火の可能性がある。危険を避ける「ガス室」設計をおこなうのが常識ではないだろうか。危険物の取扱に関する法律などがあったかもしれない。これも、厳密な調査が必要であろう。

「チクロンB」のマニュアルでは、使用する部屋の温度をあげるのに、遠方で熱した温風を送るように指示している。ところが、

 現実の「ガス室」と称されている部屋、とくにもっとも典型的で一般見学者がかならず案内されるアウシュヴィッツ・メイン・キャンプの建物の場合には、「ガス室」のとなりの部屋に焼却炉(写真14.Web公開では省略)がならんでいる。中間の扉はこわされて位置がかわり、穴があいたままになっているが、反対側の入り口の扉(写真15.同上)は木製で、構造上も密閉性はない。隙間だらけである。


(54)ポーランドの法医学調査研究所がおこなった追試調査