ナチス〈ホロコースト〉をめぐる真実とは?
イスラエル建国・パレスチナ占領の根拠は?
電網木村書店 Web無料公開 2000.5.5
[付録]イスラエルの“新しい歴史家たち”
『ヤルシャライム』紙は一九九五年四月二八日、エルサレムのヘブライ大学でゲルマン研究学科の主任、モシェ・ツィムメルマン教授とインタヴューした。
掲載記事の中の記者の紹介によると、ツィムメルマン教授は、ユダヤ人・第三帝国・ホロコーストなどのドイツ問題の専門家である。彼の歴史分析と、その結果として彼が得た結論は、……このところ、数々の公然たる議論の的となっている。……彼が確立した過去と現在の比較対照を受け入れるのは大変なことである。たとえば彼は、占領地の勤務を志願したユダヤ人の兵士と、親衛隊員の勤務を志願したドイツ人の兵士とを比較したり、ヘブロンのユダヤ人植民者の子供がヒトラー・ユーゲントのように育っていると言明したり、……イスラエルがホロコーストを利用していると告発したりするのである。
●ツィムメルマン:
●質問:『我が闘争』では、ユダヤ人を退治すべき人種として指定している。この本は常に、ユダヤ人退治という意図を発表するためのヒトラーの作戦計画の一つと見なされてきた。
●ツィムメルマン:
●質問:すべてのドイツ人を有罪だと考えるか?
●ツィムメルマン:
●質問:どういう方法によれば、われわれの占領や、われわれの法律をパレスチナ人に強制する行為と、ナチズムが犯した恐怖の数々との比較を確立できるか。
●ツィムメルマン:
●質問:あなたは、ヘブロンに住まず、カハネ[極右シオニスト。本訳書九〇頁の訳注1参照]の政党に投票せず、占領地の特殊部隊に志願しないユダヤ人という存在を強調している。
●ツィムメルマン:
※※※
イスラエルの『ハアーレツ』紙の一九九五年五月一〇日号には、ツィムメルマン教授をヘブライ大学の教壇から追放せよと威嚇する記事が載った。この威嚇は、七九人の教授(リクード党員または宗教的な統一主義者)の請願書によって支持されるものだったが、同紙の五月五日号に掲載された記事の中の談話で、ダン・マルゲリが応酬した。彼は、“人々の健全な意見”を名目とする教授たちの要求について、“思想の統一”への反対者を同様に大学から追放せよと提案したナチスの大学教授たちの態度と似ていることを指摘しながら、この追放の企てに対して抗議した。
《人はしばしばハイネのつぎの言葉を引用する。“本が焼かれる時には、人々もともに焼かれて死ぬ”。同じことがまた繰り返されている。言論の自由に関する正当な権利が脅迫を受ける時には、本も焼かれて死ぬ。……
私は自問自答する。私の思想を理由に大学から追放しようと欲する人々は、私の本をも焼けと要求するようになるだろう。毎年、多数の学生が私の本を読んでいる。彼らもやはり火刑台に捧げられるのだろうか?
私の話が恐ろしいのだろうか。私が、ヘブロンの子供たちがバルーフ・ゴールドスタインの死を記念する初めての一周年記念日に呼び集められていることに関して語り、その儀式をナチスの示威運動と比較するからでだろうか?
私が語ることは、ヒトラーの犯罪を矮小化しようとする議論とは、まったく関係がない。……ナチズムの歴史を詳しく知っているからこそ、私は、あらゆる角度からの真実を明らかにして、危険な可能性の存在についての警告を発したいと願うのだ。……私がドイツ政府に操縦されていると思う人々もいるようだが、ドイツでは反対に、政治家や公式の歴史家が見直し論者の潮流を排斥していることを思い出してほしい。その証拠となるのは、見直し論者が一九九五年五月七日に、(ドイツが降伏した)一九四五年五月八日を、単に解放の日としてだけではなくて、同時に、“ドイツ人が東ヨーロッパから追放されはじめた最初の日”として思い起こすための集会を計画したら、会場への集合を当局が禁止したことだ。
現在もっとも重要なことは、イスラエルで、真実、誠実、言論と批判的研究の自由を守ろうと考える人々が、これらの貴重な社会的理念の敵との協力や、リンチの準備を覆い隠す政治的イデオロギーの葡萄の葉としての奉仕を拒絶することなのだ》
※※※
歴史家のバルーフ・キムメリングは、この論争に関して、『イディオット・アハロノート』紙の一九九五年五月七日号で、やはり、言論と批判的研究の自由を擁護した。彼は、ツィムメルマン教授の追放を要求する請願書の署名者たちを、つぎのように非難している。
《彼らは、暴力と政治的イデオロギーをよりどころとしながら、ヘブライ大学に、知的・政治的・思想的なテロリズムの支配体制を樹立しようとしている。……思想の自由がなければ、ナチスやボルシェヴィキーの学問の実例が明らかに示すように、その名に値する科学の発達は不可能となる。……ツィンムルマン教授が追放されたなら、マッカーシー議員[アメリカの戦後のアカ狩り煽動者]の亡霊がヘブライ大学の構内をうろつきまわることになるだろう》
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『ハアーレツ』紙の一九九五年五月一二日号では、アリエー・カスピーが同じく、ナチズムの歴史の専門家のツィムメルマン教授を、彼が占領地のユダヤ人不良少年をヒトラー・ユーゲントの行為と比較したという口実で、追放する計画に反対して、つぎのような抗議の声を挙げている。……
《七九名の署名者の内のだれ一人として、ユダヤ人のシャバク[イスラエルの秘密警察]による拷問が明らかになったことに関しての請願はしていない。彼らは、尋問の途中で人が死んでも驚かない。……彼らは、植民者がアラブ人を殺しても何もいわない。……彼らは、キリャット・アルバにあるバルーフ・ゴールドスタインの墓の上に立つ“英雄バルーフ”と刻んだ霊廟の除去は要求しない。彼らは、ゴールドスタインの行為を繰り返さないという約束はしない》
同紙の注釈には、これらの人々[七九名の署名者]への反論は、出版に要する費用の関係で遅くなるし困難であるという事情の説明が、つぎのように付け加えられていた。
《彼の話によれば、ユダヤ=ナチズムは、イスラエルよりも英語圏の国々のユダヤ人の間で非常に人気がある。どんな内容のユダヤ=ナチズム文書でも、簡単な電話かファックスによる要請だけで、出版に必要な費用の援助を受けることができる。それとは真反対に、ユダヤ=ナチズムへの反対者たちは、自費出版を余儀なくされている》