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我が闘争(抄訳)


『我が闘争(抄訳)』の全文

コーブルグ事件

突撃隊は、一悶着ある毎にその強さを増して行った。殊にコーブルグで起きた事件は、ナチ党にとっても突撃隊にとっても可なり大きな試練であった。

やはり一九二二年のある日、ある民族団体がコーブルグと云う町で「ドイツ・デー」を開催することを発表した。そして私に対しても、当日若干の随員を帯同の上、一場の演説をやって貰いたいと云って来た。そこで当日となるや、私は突撃隊員以下約八百名の党員を引具し、ミュンヘンから特別仕立の列車に乗って、このバヴァリアにあるコーブルグへ乗り込むことになった。或る一つの民族団体が会場へ行くために、列車を特別に仕立てるなどと云うことは、おそらくドイツ始まって以来のことであった。我々の乗った列車は駅毎に停車し、そこで又その地方の党員を乗り込ませた。勿論沿道の多数の人々は、ナチ党に多大の関心を寄せることになったし、鉤十字の党旗もこの日は格別の光彩を放ったことである。

愈々我々がコーブルグへ到着すると、「ドイツ・デー」を代表する委員達が我々を出迎えた。そしてこの土地の独立社会党員と共産党員との間で出来た協定なるものを示したのであった。それによると「国旗を押し立てて行進すること、音楽隊を使用すること、一党一団の行進であること」は全部退けられて、我々は幾つかの小さな分隊となって、こっそり会場へまで、行かなければならぬというのであった。

勿論私は直ちにこの提案を一蹴した。この中どれ一つを受け入れても、それは我党にとって許すべからざる屈辱だからである。私はそんな間抜けな申入れは一切黙殺して、予定通り楽隊と突撃隊とを先頭に、堂々行進することを命じた。この停車場前の広場では、我々に敵意を持った眼の多数の群衆に出会ったが、そんなものは何でもなかった。我々は狼狽して了って為すところを知らぬ警官達に護衛? されながら、颯爽と街を行進して、町の中央なるホーフブラウハウスに向った。我々は全然知らなかったのであるが、我々の本部とするところはこのホーフブラウハウスではなく、射撃場であった事を後になって知った。

この町の多数の人々は、我々の後からゾロゾロとついて来た。そして我々がホーフブラウハウスに到着し、その中へ入ると、それに続いてこの大衆達も突入しようとした。それがために警官は我々を中へ入れた上で、扉に鍵を下してしまった。云はば態のよい閉じ込めを食ったわけである。これはどうにも我々に我慢のならないことであった。そのうち私は、ここが我々の本部ではないことを知ったので、時を移さず警官に扉を開けることを要求した。彼等は暫らく躊躇していたが、軈て諦めたように鍵を外した。

そこを出た我々は、再び隊形を整えて町を行進し射撃場の方へ進んだ。すると途上で待ち受けていた赤達が、乱暴にも我々の行列に向って石を投げつけて来た。構わず進んだが、益々投石は激しくなる一方である。事茲に至っては最早我々の忍耐も限度に達した。忽ち突撃隊員の突撃が開始された。そして十五分の後には、付近に赤のかけらも見えなくなってしまった。

その夜は、党員の中の個人個人が、赤のために至る所で襲撃された。そこで我々は今度は本気になって、襲撃して来る連中を追跡し片っぱしから之を征服した。そのお陰で、この夜一夜だけで、数年間コーブルグを悩ましていた赤の恐怖が、すっかり打倒されたのであった。

赤たちはマルクス主義者やユダヤ人特有の陰険な方法を以て、「ナチ党は平和な労働者諸君を攻撃するためにコーブルグへ大挙してやってきたのだ」とデマを飛ばしていた。そんなことのために、我々は味方であるべき大衆からも、憎悪の眼で見られなければならなかった。彼等は午後一時半に、ナチ党をへこますために、労働者の一大示威運動を決行すると発表した。こいつは面白いと思った。そこで私は、果して彼等が我々を攻撃するだけの勇気があるかどうかを試すつもりで、若干の突撃隊員とその時刻に、発表された広場へ行ってみた。

ところが行って見ると、数千人の示威運動を行うという触れ回しであったのに、僅か数百人しかいなかった。突撃隊員がそこへ乗り込んで行くと、彼等の中の或者はいち早く逃げ出した。残っていた大部分の者はなんにもしないで立ち尽していた。僅かに数人の赤衛隊員だけが我々を攻撃しようと企てたが、それすらも間もなくその気力を失ってしまった。

赤の力は大衆の前に遺憾なく暴露された。我々がこの広場から隊伍を整えて戻ってくると、沿道の大衆の気分が非常に違って来ていることに気がついた。赤のために長い間威圧され、苛められて戦々恐々としていた大衆は、我々と赤との間に行われた闘争の結果から、漸く勇気を取り戻したのである彼等は我々に敬礼したり、歓呼の声を浴びせたりし始めた。その歓呼の中には、衷心から 迸 り出るものをも多分に聞き取ることが出来たのであった。

しかし、我々がミュンヘンへ引揚げるべく停車場へやって来ると、そこの鉄道労働者が我々の列車を運転することを拒否した。そして反抗の気勢を示した。私は時を移さずその指導者階級の者数人を捕えさせて、彼等を人質として客車の中へ連れ込み、君達が運転しなければ、我々の手で動かすのみだと脅かした。

列車は遂に時間通りに出発することになった。そして我々は無事にその翌朝ミュンヘンへ帰って来たのであった。

我々の意気は実に軒昂たるものがあった。しかしそれは我々だけの凱歌ではなかった。ドイツ全体が、この時を契機として、ナチ党の意気の中に重大なものを認識し始めたのだ。彼等は、滔々たるマルクス主義の濁流を阻止し、且つ之を消滅せしめる力は、ナチ党の中にのみあることを漸く理解し始めた。ただ民主主義的な考えを持つ者だけが、力に対して力を以て報いる我々の闘争に不満を持っていたに過ぎない。

コーブルグ事件のお陰で、我々は当日の敵の中から、若干の味方を獲得することが出来た。マルクス主義の洗礼を受けていた労働者達は、ナチの労働者の鉄拳を喰って、この鉄拳の中にこそ、真のドイツの生きる力が込められていることを始めて悟ったのである。

しかしコーブルグ事件の最大の収穫は外にあった。それは、今迄あらゆる会合に於て、赤のテロ行為がのさばり、殆んど満足な会合を持ち得なかったものが、今度は逆に、彼等のこのテロ行為に対して攻勢に出得る党の出現を認識させたという一事である。今迄民衆から失われていた会合の自由権を今こそ我々は奪還したと宣言して憚らなかった。斯くて全盛を誇ったバヴァリア地方の赤の城砦も、この日を境として次から次へと我が突撃隊とナチ党の宣伝との餌食にされるに至った。


  • 『いわゆるヒトラー一派のガス室といわゆるユダヤ人の虐殺は、同一の歴史的嘘である。この嘘のおかげで、非常に大きな政治的・金銭的詐欺行為が容認され、そのおもな受益者はイスラエル国家と国際シオニズムであり、そのおもな犠牲者はドイツ国民―その指導者ではない――とパレスチナ民族全体である。』

    — ロベール・フォーリソン教授博士

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